心のSOS、見過ごしていませんか?〜休職のサインと、今日からできる第一歩
社会保険労務士・心理カウンセラーとして、日々の業務で多くの方の心の悩みに触れています。
仕事のプレッシャーや人間関係、将来への不安など、ストレスを抱えながらも「休むのは甘えだ」「自分はまだ頑張れる」と感じてしまい、無理を重ねている方も少なくありません。しかし、**休むことは病気の治療において、また自分自身の心と体を守るために与えられた「権利」**であり、決して「甘え」ではありません。心の不調は、生物学的な要素も大きく、脳の病気として捉えるべきものもあります。ご自身の、あるいは周囲の人の心のSOSに気づき、適切な対応を取るための情報をお伝えします。
休職を考えるべき「サイン」
以下のようなサインが見られる場合、休職を検討することをお勧めします。
- 本人の「休みたい」という意思
- 自分では「まだ頑張れる」と思っていても、もし心の奥底で「休みたい」と感じているなら、それはすでに体が限界を迎えている証拠かもしれません。
- 周囲の意見
- 上司や同僚、家族など、身近な人が「休んだ方がいい」「精神科を受診してはどうか」と勧めてくる場合、自分では気づかないほど症状が進行している可能性があります。周囲の客観的な意見に耳を傾けることが大切です。
- 仕事のパフォーマンスの低下
- 職場には行けているものの、1時間以上何も手につかない、仕事の生産性が著しく低下している、イライラして周囲に当たってしまう、職場で涙が止まらなくなるといった状況は、無理に出勤を続けても、かえって評価を下げてしまう可能性があります。
- 顕著な身体症状
- 食事がほとんどとれない、睡眠に大きな問題がある(眠れない、過眠など)、体重が急激に変化している。
- 出勤しようとすると動悸がする、体が震えるなど、明確な身体的なサインが出ている場合。
- 重篤なサイン
- 死にたいという気持ちが頻繁に浮かぶ。
- 労災の過労死基準に該当するような過重労働(直近2〜6ヶ月で月80時間以上の残業、または直近1ヶ月で100時間以上の残業)がある場合。
これらのサインのうち、一つでも当てはまる場合は、休職を真剣に考えるべきです。
悩んだ時に「まず」行うべきこと
「鬱っぽい」「悩んでいる」と感じた時に、まず実践してほしいことがあります。
- 最優先は「休息」
- 多くの人は、問題を解決しようと焦りがちですが、まず脳の疲労を軽減することが最も重要です。
- 自分のスケジュールを見直し、意識的に休息時間を確保しましょう。目を閉じて椅子に座るだけでも脳は休まります。
- 家事や育児で休息が難しい場合は、配偶者や家族に協力をお願いすることも有効です。
- 問題の「可視化」
- 漠然とした不安や悩みを具体的な形にするため、何が問題なのか、何が不安なのかを書き出してみましょう。
- ただ感情のままに書き連ねるのではなく、**「事実」「その事実に対する自分の考え」「その結果生じた感情」**というように、認知行動療法的なアプローチで整理すると、客観的に問題を見つめ、解決策を見つけやすくなります。
- 「専門家」への相談
- 友人や家族は親身になってくれますが、無意識のうちにバイアスがかかったアドバイスをしてしまうことがあります。体調が悪い時こそ、客観的な視点と専門知識を持つプロフェッショナル(精神科医、心理カウンセラー、弁護士、キャリアカウンセラーなど)に相談しましょう。
- 医師は患者の意思を尊重し、「休みなさい」と強制するのではなく、「休んだ方が良いのではないでしょうか」と助言し、本人と共に治療方針を決めていくというスタンスを取ります。
- 「犬の道」を避ける
- 「もっと頑張れば」「自分の努力が足りないから」と考えて、非効率で徒労に終わるアプローチ(「犬の道」)に陥ることがあります。これは、性格や能力の問題ではなく、問題解決のための「技術」や「ノウハウ」を知らないがために起こることが多いのです。専門家は、その「技術」や「ノウハウ」を提供し、適切なアプローチへと導くことができます。
まとめ
心の不調は、決して「気のせい」や「甘え」ではなく、脳の疲労や生物学的な要因が関係している場合もあります。一人で抱え込まず、今回ご紹介したサインに気づいたら、まずは「休息」をとり、問題を「可視化」し、そして何よりも「専門家」の力を借りることを強くお勧めします。早期の対応が、心と体の回復への最も確実な道となるでしょう。
社会保険労務士・NPO法人心理カウンセラー 加藤 貴大
