素人が契約書作成に当たって見落としがちな注意点
一般的な契約書作成、専門家でなくても安心?一般人が見逃しそうな重要ポイント8選
個人間の取引やフリーランスの業務委託など、ビジネスの様々な場面で交わされる契約書。専門家に依頼するのが最も安全ですが、費用や時間の都合上、自分で作成するケースも少なくありません。しかし、安易に作成した契約書が、後々大きなトラブルに発展する可能性も潜んでいます。
ここでは、法律の専門家ではない一般の方が契約書を作成する際に、特に見落としがちで、かつ非常に重要なポイントを8つに絞って解説します。
1. 「誰が、何を」が曖昧になっている(当事者と目的の特定)
見落としがちな点:
「甲」「乙」といった記号だけで、当事者が誰なのかを具体的に特定していないケースが見受けられます。また、契約の目的(「何を」する契約なのか)が曖昧な表現になっていると、後々「そんなつもりじゃなかった」という解釈の食い違いが生じます。
押さえるべきポイント:
- 当事者の特定:
- 個人: 氏名、住所を正確に記載します。
- 法人: 会社の登記上の本店所在地、会社名、代表者の役職・氏名を正確に記載します。
- 契約の目的の明確化:
- 例(業務委託契約):
- 悪い例: 「甲は乙に対し、コンサルティング業務を委託する。」
- 良い例: 「甲は乙に対し、甲の運営するウェブサイト『〇〇』の集客を目的としたSEO(検索エンジン最適化)に関するコンサルティング業務(月1回のレポート提出、週1回の定例会議を含む)を委託し、乙はこれを受託する。」
- 例(業務委託契約):
2. 「いつ、いくらで、どのように」が具体的に決まっていない(履行条件と対価)
見落としがちな点:
業務の完了時期や支払いサイト、支払い方法といった具体的な条件を口約束で済ませ、契約書に明記しないケースです。特に金額に関する部分は、トラブルの最大の原因となります。
押さえるべきポイント:
- 期限の明確化: 「〇年〇月〇日まで」「納品後〇営業日以内」など、具体的な日付や期間を定めます。
- 金額の明記:
- 消費税込みか税抜きかを明確にします。
- 報酬の支払い時期(例:「納品物の検収完了月の翌月末日までに」)と支払い方法(銀行振込など)を具体的に定めます。
- 振込手数料をどちらが負担するかも記載しておくと親切です。
- 業務の進め方: 成果物の納品方法(データ、書類など)、検収の有無、検収期間なども定めておきましょう。
3. 「もしも」の時のルールが決まっていない(解除・解約条項)
見落としがちな点:
契約が順調に進むことだけを前提とし、相手方が義務を果たさなかったり、やむを得ず契約を途中で終了させたい場合のルールを定めていないことがあります。
押さえるべきポイント:
- 契約解除ができる場合:
- 相手方が支払いを怠った場合
- 相手方が契約内容に違反した場合
- 相手方が倒産した場合 など
- 中途解約: 「当事者は1ヶ月前に書面で通知することにより、本契約を解約できる」といった、自己都合で解約する場合のルールも定めておくと、柔軟な対応が可能になります。
- 解約時の処理: 解約時に支払い済みの金銭をどうするのか、作成途中の成果物をどう扱うのかなども決めておきましょう。
4. 損害賠償の範囲が無限になっている
見落としがちな点:
「本契約の違反により相手方に損害を与えた場合、一切の損害を賠償する」といった条項は、一見公平に見えます。しかし、予期せぬトラブルにより、事業の継続が困難になるほどの莫大な賠償責任を負うリスクがあります。
押さえるべきポイント:
- 損害賠償額の上限設定: 「損害賠償額は、本契約に基づき買主が売主に対して支払った代金額を上限とする」など、賠償額に上限を設けることで、リスクを限定できます。これは、発注側・受注側双方にとって公平なリスク分担につながります。
5. 成果物の権利が誰のものか不明確(知的財産権の帰属)
見落としがちな点:
デザインやウェブサイト、プログラム、記事などの制作物を委託した場合、その成果物の著作権などの知的財産権が、発注者と受注者のどちらに帰属するのかを明確にしていないケースです。
押さえるべきポイント:
- 権利の帰属先を明記:
- 発注者に帰属させる場合: 「本業務の履行により生じた成果物に関する一切の知的財産権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)は、乙から甲に移転するものとする。」といった条項を入れます。
- 著作者人格権の不行使: 「乙は甲に対し、著作者人格権を行使しないものとする。」という一文も重要です。
6. 秘密保持の義務が定められていない
見落としがちな点:
契約交渉や業務遂行の過程で、相手方の技術情報、顧客情報、ノウハウといった重要な内部情報に触れることがあります。これらの情報の取り扱いについてルールを定めておかないと、情報が漏洩するリスクがあります。
押さえるべきポイント:
- 秘密情報の定義: 何が秘密情報にあたるのかを定義します。
- 目的外使用の禁止: 契約の目的以外で情報を使用することを禁止します。
- 第三者への開示禁止: 相手方の承諾なく第三者に情報を開示することを禁止します。
- 契約終了後の取り扱い: 契約終了後に情報を返還または破棄する義務を定めます。
7. 反社会的勢力排除条項(反社条項)がない
見落としがちな点:
近年、企業のコンプライアンス(法令遵守)意識の高まりから、ほとんどの企業間取引の契約書に盛り込まれています。この条項がないと、後々取引先が反社会的勢力と判明した場合に、関係をスムーズに断ち切ることが難しくなる可能性があります。
押さえるべきポイント:
- 表明・保証: 契約当事者双方が、自らが反社会的勢力でないこと、また将来にわたっても関与しないことを表明し、保証する内容を記載します。
- 契約解除: 相手方が反社会的勢力であることが判明した場合、催告なしに直ちに契約を解除できることを定めます。
8. 収入印紙を貼り忘れている
見落としがちな点:
契約書の種類や契約金額によっては、印紙税法に基づき「収入印紙」を貼付する必要があります。これを怠ると、過怠税が課される可能性があります。
押さえるべきポイント:
- 課税文書か確認: 国税庁のウェブサイトなどで、作成する契約書が印紙税の課税対象(課税文書)にあたるか、金額はいくらかを確認しましょう。
- 例:「請負に関する契約書」(業務委託契約書など)や「金銭消費貸借契約書」などは課税文書です。
- 貼付と消印: 該当する場合は、正しい金額の収入印紙を契約書に貼り、印鑑または署名で消印をします。
最後に:迷ったら専門家へ相談を
加藤 貴大 行政書士 事務所
