子ども子育て拠出金と新設 子ども子育て支援金の比較(NEW)
日頃からお世話になっております。社会保険労務士・行政書士の加藤 貴大です。
今回は前から設けられていた子ども・子育て【拠出金】と子ども、子育て支援金の
違いを整理してみました。
子ども・子育て「拠出金」と「支援金」の比較整理
1. 制度の全体像(位置づけ)
- 子ども・子育て拠出金(既存)
厚生年金に紐づいて、企業が全額負担している拠出金。児童手当等の財源の一部。
→「厚生年金に付いてくる“事業主拠出”」 - 子ども・子育て支援金(新設・2026年度~)
医療保険(健保・協会けんぽ・共済・国保・後期高齢)の保険料に紐づく、労使+高齢者も含めた全世代負担。
→「医療保険に付いてくる“社会全体の連帯拠出”」
2. 子ども・子育て拠出金 vs 子ども・子育て支援金 対比表
| 項目 | 子ども・子育て拠出金(既存) | 子ども・子育て支援金(新設) |
|---|---|---|
| 制度の根拠 | 子ども・子育て支援法 | 子ども・子育て支援法の改正規定(支援納付金制度) |
| 導入時期 | 2014年(子ども・子育て支援新制度開始時) | 2026年度(令和8年度)から段階的導入 |
| 紐づく社会保険 | 厚生年金保険(標準報酬・標準賞与に率を乗じて算定) | 公的医療保険(協会けんぽ・健保組合・共済・国保・後期高齢医療) |
| 負担者 | 厚生年金の適用事業所の「事業主のみ」(労働者負担なし) | 医療保険の被保険者全員+事業主(被用者保険は労使折半、高齢者も負担) |
| 給与からの控除 | なし(会社が全額負担) | あり(会社員は給与・賞与から控除、事業主と折半) |
| 徴収の仕組み | 厚生年金保険料の算定基礎と同じ標準報酬月額・標準賞与額に、拠出金率を乗じて算定 | 医療保険料と同様に標準報酬月額・標準賞与額などを基礎に「支援金率」を乗じて算定(医療保険料と区分して徴収) |
| 拠出率(上限) | 法定上限:0.40%(1000分の4.0)以内/2025年度実績:0.36% | 令和8年度~10年度にかけて段階的引上げ。8年度:被用者保険本人負担で月額約550円、10年度で約800円程度の想定 |
| 対象者 | 厚生年金の被保険者を使用する全事業主(法人等の適用事業所) | すべての医療保険の被保険者(現役+高齢者)および事業主 |
| 制度の目的 | 児童手当等の子育て支援施策の安定財源の一部(消費税財源とあわせて) | 年3.6兆円規模の子ども・子育て政策拡充(児童手当拡充等)のための新たな「特定財源」 |
| 制度の理念 | 子ども・子育て支援新制度(保育・教育・地域子育て支援)の財源分担 | 「社会連帯の理念」に基づき、全世代・全経済主体で子育て世帯を支える仕組み |
| 政府の位置づけ | 既存制度として継続(当面維持) | 歳出改革による社会保険料負担軽減の範囲内で導入(支援金導入で社会保障負担率が上がらないよう設計) |
| 企業の負担の仕方 | 企業が拠出金率分を全額負担して日本年金機構に納付 | 企業は健康保険分の支援金を、保険料と合わせて労使折半で負担(国保・後期高齢は本人負担のみ) |
| 制度の恒久性 | 恒久的制度 | 同じく恒久的制度(令和8~10年度は構築期間。特例公債で一部つなぎ融資) |
3. 使い道(どのような施策に充てられるか)
3-1. 子ども・子育て拠出金(既存)
- 主な使途(従来からの位置づけ)
- 児童手当の給付費の一部
- 子ども・子育て支援新制度(保育・認定こども園・地域型保育等)の一部財源
※拠出金そのものは事業主負担で、児童手当等の「子育て関連給付」の財源として厚生年金適用事業主に広く分担を求めているイメージです。
3-2. 子ども・子育て支援金(新設)
支援金の使途は、法令で子育て支援関係に限定されており、他用途への流用は禁止されています。
代表的な具体メニューは以下のとおりです。
- 児童手当の拡充(2024年10月支給分から)
- 所得制限の撤廃
- 対象年齢:高校卒業まで(18歳到達後最初の3月末まで)
- 第3子以降:月3万円への増額 等
- 妊婦支援給付金・出産前後の経済支援
- 妊婦10万円給付(出産前後で合計10万円:2025年4月~)
- 出産・子育て応援給付金の制度化(妊婦支援給付金)
- 共働き・共育て支援(就業と育児の両立支援)
- 出生後休業支援給付金(育休中、原則「手取り10割」相当を目指す拡充:2025年4月~)
- 育児時短就業給付金(時短勤務中の賃金の10%補填など:2025年4月~)
- 国民年金第1号被保険者(フリーランス等)の育児期間中保険料免除:2026年10月~
- こども誰でも通園制度(現物給付)
- 保育所等に通っていない0歳6か月~2歳の子どもでも、保育所等を「月10時間」程度利用可能(2026年4月から全国本格実施)
- その他
- 子ども・子育て支援特例公債の償還金(令和6~10年度の経過措置)
- 上記一連の施策を含む、「こども未来戦略」(年3.6兆円規模)の一部財源
※0~18歳まででみると、「平均146万円程度」の給付拡充効果が見込まれると説明されています。
4. 財源規模・負担イメージ
4-1. 子ども・子育て拠出金(既存)
- 拠出金率
- 法定上限:0.40%(1000分の4.0)
- 近年の実績:0.36%(令和2年4月分以降据え置き)
- 負担者
- 厚生年金適用事業所の事業主が全額負担
- 規模感
- 厚生年金の標準報酬総額に0.36%を乗じた額が毎年度、児童手当等の財源の一部として拠出されるイメージ(統計上の正確な金額は年度ごとの国の予算資料で確認)。
4-2. 子ども・子育て支援金(新設)
- 総額の目安(政府が法律附則で示した方向)
- 令和8年度(2026年度):概ね 0.6兆円
- 令和9年度(2027年度):概ね 0.8兆円
- 令和10年度(2028年度):概ね 1.0兆円
- ※同時期の社会保障の歳出改革(医療・介護等)による社会保険料負担軽減効果(0.6兆円程度)と「相殺」させる設計 → 支援金導入によって社会保障負担率を上昇させない方針
- 保険者別・一人当たりの負担目安(令和8年度試算)
- 被用者保険(会社員・公務員等):
- 被保険者一人当たり平均 約550円/月(本人負担分・労使折半)
- 国民健康保険:
- 1世帯当たり平均 約300円/月
- 後期高齢者医療制度:
- 被保険者一人当たり平均 約200円/月
- 被用者保険(会社員・公務員等):
- 年収別目安(被用者保険・本人負担、令和8年度のこども家庭庁試算)
- 年収200万円:月額約192円
- 年収400万円:月額約384円
- 年収600万円:月額約575円
- 年収800万円:月額約767円
- 年収1,000万円:月額約959円
- 「新たな負担かどうか」の整理
- 制度としては「新たな拠出」であり、給与明細にも新たな控除項目が出てきますが、
- 一方で、医療・介護等の歳出改革による社会保険料の負担軽減とセットで導入され、
- 「支援金分で社会保障負担率が上がらないようにする(実質的な新たな負担増は生じない)」というのが政府の説明です。
5. 企業の実務上の整理ポイント
人事・給与実務で押さえていただきたいのは次の点です。
- 拠出金(既存)
- 従業員負担なし。会社の法定福利費として「厚生年金保険料」とは別項目で計上。
- 料率0.36%は今後改定される可能性があるため、毎年度の日本年金機構の公表を確認する。
- 支援金(新設)
- 健康保険料・介護保険料と併せて徴収されるが、納入告知書などでは「子ども・子育て支援金額」として区分表示される予定。
- 2026年4月分保険料から開始
- 当月徴収の会社:2026年4月支給給与から控除
- 翌月徴収の会社:2026年5月支給給与から控除
- 2026年4月支給の賞与も対象
- 育児休業中は、健康保険料・厚生年金保険料と同様、支援金も免除される方向で制度設計されているため、「産育休中は会社も本人も負担なし」という整理になります。
6. 貴社で想定される質問への準備
社内から想定される質問としては、
- 「今ある子ども・子育て拠出金はなくなるのか?」 → 当面は両方並立(既存拠出金は維持)
- 「給与明細のどこに出るのか?」 → 医療保険料(健康保険料)の一部として新たな控除項目が出る想定
- 「負担はどのくらい増えるのか?」 → 現時点の試算(年収別・月額)を示す
- 「独身や子どもがいない人も払うのか?」 → 全世代・全経済主体による連帯負担であり、その子どもたちが将来の社会保障の担い手になるという説明
あたりが典型です。
