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令和時代を生き抜くためのハラスメント対策:心理と組織の健全性を守る

現代社会において、ハラスメントは単なる個人間の問題ではなく、企業の存続を左右する重要な経営課題となっています。特に「労働供給制約社会」の到来は、一人ひとりの労働力をこれまで以上に貴重なものとしています。ハラスメントは貴重な人材の流出や企業イメージの毀損に直結するため、その防止と適切な対応は不可欠です。本記事では、特にセクハラとパワハラに焦点を当て、カスハラにも触れつつ、その本質と効果的な対策について専門家の視点から解説します。


1. セクシュアルハラスメント(セクハラ)の深化と対応

セクハラは、職場における労働者の意に反する性的な言動が、労働条件の不利益(対価型)や就業環境の悪化(環境型)につながるものです。

  • 広がる対象と認識: 正社員だけでなく、派遣社員、学生、フリーランスも被害対象となり得ます。同性間や性的指向・性自認(LGBTQ+)に関する言動も含まれ、取引先や顧客からの行為も対策が必要です。
  • 「同意」の錯覚: 被害者がその場で笑っていたり、嫌がっていないように見えても、それは真の同意ではないことが多いです。特に立場の弱い者がその場で反発できないケースを理解することが重要です。
  • 具体的な行為例:
    • 身体接触は原則NGです。
    • 容姿やプライベートに関する執拗な言及。
    • 業務と関連性のない性的な内容の発言や行動。
    • 本人不在の場での人格否定発言も、就業環境を害するセクハラとなり得ます
  • 対応のポイント:
    • その場で: 話題変更、席移動、注意喚起。
    • 事後: 上位者や人事への報告・情報共有。被害者への継続的な声かけ(「1日3分」の気遣い)で孤立を防ぐ

2. パワーハラスメント(パワハラ)の本質と対策

パワハラは、職場の優越的関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で就業環境を害する行為です。セクハラと異なり「業務上の必要性」と「相当性」という判断基準がある点が重要です。

  • 「必要性」と「相当性」: この二つの軸で判断されます。
    • 必要性がない場合: 人格否定の暴言や身体的攻撃は、いかなる理由でもアウトです。
    • 相当性がない場合(やりすぎ): 正しい内容の指導であっても、長時間・大声での叱責、公開での叱責はやりすぎと見なされます。
  • 厚生労働省が示す6つの類型(注意点あり):
    1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
    2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
    3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
    5. 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
    • 注意点: 類型1・2は違法性が明らかですが、3~6は業務範囲内であれば問題ない場合もありますが、やり方によっては違法となるため、程度問題であり、一律に並列で捉えるべきではありません。
  • 具体例から学ぶ:
    • 労働時間隠し: 違法行為の強要であり、企業リスクを高めます。
    • 公開叱責: 周囲の社員にも影響を与え、職場の士気を低下させます。改善点を具体的に伝え、建設的な対話を心がけましょう
    • 在宅勤務でのビデオオン指示: 業務上の必要性があるなら問題ありませんが、従業員のプライバシーにも配慮した対応が求められます。
    • 非正規雇用者への差別: 契約形態に関わらず、チームの一員として尊重すべきです。
  • 管理職の役割とサポート: ハラスメントを恐れて指導をしない「ゆるブラック」な職場は、かえって従業員の成長を阻害し、離職を招きます。会社は「ここまでなら指導OK」という明確な基準を示し、管理職が孤立しないよう、いつでも相談できる体制を整えることが必須です。

3. カスタマーハラスメント(カスハラ)への組織的対応

カスハラは、顧客等からの要求が社会通念上不相当な行為で、従業員の就業環境を害するものです。若年層の従業員は感情的なやり取りに不慣れなことが多いため、組織的な対応が急務です。

  • 判断の基準: 要求内容の妥当性(企業の過失の有無)と、要求手段の相当性(暴言・暴力など)で判断。
  • 4象限モデルで整理:
    • 正当クレーム: 内容・手段とも適切、真摯に対応。
    • 怒りすぎカスハラ: 内容は適切だが手段が不当。
    • 言い方が丁寧なカスハラ: 内容は不当だが手段は丁寧。
    • 純度100%カスハラ: 内容・手段とも不当。
  • 企業の取るべき措置:
    • 基本方針の明確化と周知徹底: 「カスハラ禁止」のメッセージを掲示・HP等で明確に発信し、全従業員に浸透させる。
    • 対応手順の確立: 現場従業員に判断を任せず、本部や専門部署が対応基準・手順を定め、警察等との連携も具体的に決める。
    • 実践的な教育: 事例ベースの研修を行い、事実確認、謝罪範囲、対応打ち切り基準などを具体的に指導する。

結論:継続的な対話と組織のコミットメントが未来を拓く

ハラスメント問題の解決は、単発の研修やeラーニングだけでは不十分です。多様な価値観を持つ従業員が共存する現代において、職場のハラスメントに対する共通認識を醸成し、定期的にすり合わせを行うことが不可欠です。経営層の強いコミットメントの下、人事部門が現場と連携し、具体的な事例を通じた継続的な対話と教育を重ねることで、従業員が安心して働ける、真に生産性の高い職場環境を実現できます。健全な組織文化は、人材確保と企業成長の基盤となることを肝に銘じ、積極的にハラスメント対策に取り組んでいきましょう。


社会保険労務士・NPO法人心理カウンセラー 加藤 貴大

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